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ミキクロウ

Author:ミキクロウ
知識のないまま、気分、駄文垂れ流し。多分でなく、自分満足と判っております。
ジャンルも文体も不安定な感じです。
読み易い、を何とか目指します。
リンク・アンリンクフリーです。

qoo-low@hotmail*co.jp
ご指摘、感想など御座いましたらお気軽にどうぞ。

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はがゆい
過去のものばかりで、スタイル定まらなさ過ぎで申し訳ない



何だか、歯が痒い。

「カッカッカッ」
鳴らしてみる…駄目。

「ギリギリギリギリ」
噛み締めてみる…駄目。


「なつき?」
静留が不思議そうに覗き込む。
「どないしたん?」
顔を伺うように、階段を後ろ向きに降りる。
「何でもないんだが、」
危ないから、と手を伸ばす。

「ッ!!」
案の定、彼女は足を滑らせ、慌てて手摺に掴まる。
反対側の、私に伸ばしかけた手は、宙を掻いた。

「危ないだろ。」
肩に手を置き、前を向かす。
ふふ、と笑った肩は反省などしていない。

ごうっと風が吹き、地下鉄が着いた事を知らせた。
足早に向かう人達と群れて、私達も地下鉄に乗り込む。

ぎゅうぎゅうとまでは行かなくとも、それなりに混んだ車内。
「階段より、離れれば良かったなぁ。」
静留は人差し指で顎をなぞりながら、思案顔。
私が頷くと、肩を強引に動かして、寄って来た。

背広姿のサラリーマンが、新聞をガサガサッと不快そうに振る。

「ふふ。でも、これでなつきに密着出来るわぁ。」
扉を背にした私の腰に、腕を回す。
目で咎めたけれど、見なかったふりで、腕は離れない。
新聞がもう一度、ガサガサッと云った。

カーブに差し掛かった地下鉄が、背中を扉に押し付ける。
自然、静留の体も私に押し付けられる。
寒い街を抜けて来た彼女は、着込んで居る様で、服の重みだけが圧し掛かった。
「重い。」
不満を漏らすと、くすくすと笑い返される。
「いっぱい着込んで来たからなぁ。」
「寒かったか?」
「今はちょぉ暑いわ。電車、混んどるから。」
云われて彼女の頬に触れてみると、じんわり、と熱っぽさが伝わった。
「なつきの手ぇ、ひゃっこいなあ。」
静留は腰に回してた腕をあげると、私の手に触れようとする。

瞬間、視界が明るくなった。
駅に着いた様だ。
プシューと云う重い音と共に、扉が開く。
篭った熱とともに、人がホームへ流れ出る合図。

むんずと静留の腕を掴むと、一度降りて待つ。
此の駅で、随分降りる。
「随分降りますなあ。」
「座れるかもな。」


「残念。」
再び乗り込んだ頃には、シートはすっかり満席になって居た。
「良えよ、先刻んトコ居よ?」
静留に促され、また、扉に背中を預ける。

空いたものの、地下鉄の車内は煩い。
話すには少し面倒臭い。
歯が、痒くなって来た。

「ゴツゴツゴツ」
今度は口を閉じて、鳴らしてみた。…やっぱり、駄目。

「なつき、また、」
静留が不思議そうに私を見る。
「痒い。」
聞き取れる様に、はっきりと、ゆっくりと云った。
「痒いん? 何処が?」
「歯。」
「あ?」
「歯。」
「は?」
「そう、歯。」
「そうは?」
静留は眉根を寄せ、難しい顔をして居る。
私も顔をしかめ、困った。
「めんどくさい。」
今度は聞き取れたのか、私がそう云うと、少し寂しそうに頷いた。

それから、静留は手を出した。
眉を顰めると、ポケットに入った私の手を引っ張る。
何だかよく判らないまま、私は手を出すと、静留の手に乗せてみた。

あたたかい感触が広がると期待したけれど、そうでもなかった。
私の手も、何時の間にか温まっていた様だ。
静留の掌の温かさと、そう違わなかった。

また、視界が明るくなる。
ブレーキが掛かって、二人して体がよろける。
扉が開く音が大きくて、繋いだ手を振り上げると耳元で告げる。
「体温が、一緒だな。」
私が笑いながら云ったその台詞は、丁度良く静かになった車内に響いた。

そんなに大声を出したつもりはなかったのだが。
ガサガサッと新聞の音がして、慌てて口をつぐむ。
静留も、ビックリした顔をして車内を見やった。

目的地はもう一つ先の駅。
「一駅、歩かないか?」
照れ隠しもあって、返事も待たず、片足を蹴り出す。
「えぇよ。」
期待通りの返事は含み笑いで、ホームに着地。

繋いだ手を引っ張って、階段を上る。
同じ体温で繋がって、同じ気持ちを持ち合わせて。
今夜はそう、夜道を歩きたいんだ。
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SS(なつしず) | 05:10:12 | Trackback(0) | Comments(0)
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